マイク音声にリアルタイムでコンプをかけたい?それ、無料でできます。
「Discordで話していると、大きい声が急にうるさくなる」「マイクの音量がバラつく」「小声が聞き取りづらい」――
こういった音声トラブル、コンプレッサーを使えばきれいに解決できます。
今回は、リアルタイムで自分のマイク音声にコンプレッサーをかけてDiscordに送るための方法を紹介します。
しかも、使うのは全部無料ソフト。
設定はちょっとだけ面倒ですが、この記事のとおりに進めれば再現できます。
🔧 この構成でできること
- 大声を抑えて耳障りにならないようにする
- 小声でもしっかり聞こえるようにする
- 自分の声をDiscordにリアルタイムで送る
まずは全体像を見てください。マイクからDiscordに届くまで、こういう流れになっています:

🧰 使うソフト一覧(すべて無料)
- VoiceMeeter Banana(仮想ミキサー)
- Cantabile Lite(VSTホスト)
- TDR Kotelnikov(フリーのコンプレッサー)
📌 注意点
- Windows専用の構成です
- 一部、音声デバイス設定に慣れていないと戸惑う箇所がありますが、スクショ付きで丁寧に解説します
それでは、まずは必要なソフトを揃えるところから始めましょう。
目次
0. 準備編:必要なソフトをダウンロード
この構成で使う3つの無料ソフトを、まずはすべてダウンロードしておきましょう。
インストールと設定は次章以降で行います。
🧰 使用するソフト一覧(すべて無料)
ソフト名 | 役割 | ダウンロードリンク |
---|---|---|
VoiceMeeter Banana | 仮想ミキサー(音声の分岐・出力) | 公式ページ |
Cantabile Lite | VSTホスト(プラグイン動作環境) | 公式ページ |
TDR Kotelnikov | フリーのコンプレッサープラグイン(no installer版) | 公式ページ |
ダウンロード時の注意点と確認ポイント
🟦 VoiceMeeter Banana
・ダウンロードリンク:ページを少しスクロールし、Voicemeeter 2.1.1.9 (ZIP Package)
・実際に落ちてくるファイル名:VoicemeeterSetup_v2119.zip

🟦 Cantabile Lite
・ダウンロードリンク:ページを少しスクロールし、Download Cantabile Lite – Free
・実際に落ちてくるファイル名:SetupCantabile-4220.exe

🟦 TDR Kotelnikov
・ダウンロードリンク:ページを少しスクロールして右側の、Windows (no installer)
・実際に落ちてくるファイル名:TDR Kotelnikov (no installer).zip

ポイントまとめ
- それぞれのソフトは、あとで使うのでどこに保存したか忘れないようにしてください
- 圧縮ファイル(ZIP)は、次の章で解凍して使用します
次章からは、それぞれのソフトを順番にインストール・設定していきます。
まずは仮想ミキサー「VoiceMeeter Banana」の準備から始めましょう。
1. VoiceMeeter Bananaのインストールと設定
インストール手順
- 準備編でダウンロードした
VoicemeeterBanana_ZIP_Package.zip
を解凍します。 - 中にある
voicemeeterprosetup.exe
を 右クリック → 「管理者として実行」 します。 - 次のようなインストーラー画面が表示されるので、右下の「Install」ボタンをクリックしてください。
- インストール完了後、PCの再起動を必ず行ってください。

VoiceMeeter Banana の基本設定
まずはGUIを立ち上げます。Windowsのスタートメニューから
VB-Audio → VoiceMeeter Banana x64 を選択して起動します。
起動出来たら、次のように設定します。

- マイクを選択: Stereo Input 1 に使用するマイクを指定 例:WDM: Headset Microphone 等
- A1はOFF: A1はスピーカーへの出力のため今回は不要
- B1はON: 仮想出力(Discordなどに送る音声)
- スピーカー設定(A1〜A3)は今回は使用しません
PATCH INSERTの設定
上部メニューから
Menu → System Settings を開きます。
設定画面下部にあるPATCH INSERT → in1 Left
と in1 Right
を ON にします。
→ Cantabile などの外部エフェクト用のルーティング
※ 画面中央付近にある SampleRate(SR)は常に 48,000Hz に固定されており、ユーザーは変更できません

💡 補足:Windows側のサンプルレートについて
- VoiceMeeter自体は48,000Hzで固定ですが、
Windowsのマイクプロパティでも48,000Hzにしておくと安定しやすいです。 - ただし、設定できない機器もあるため、無理に合わせる必要はありません。
この章のまとめ
ここまでで、マイク音声をVoiceMeeter Bananaで受け取り、仮想出力(B1)として中継できる状態が整いました。
これにより――
- マイクの音量を一定に整える「コンプレッサー」を適用するために
Cantabile(VSTホスト)へ音声を送る準備ができた - 同時にその音声を、Discordなどの通話アプリへも届けられるようになった
次章では、Cantabileを使ってリアルタイムにコンプレッサーをかける設定を行っていきます。
2. Cantabile Liteのインストールと設定
VoiceMeeter Bananaでマイク音声のルートが整ったら、次はVSTエフェクト(TDR Kotelnikov)を通すためのホスト環境を準備します。
ここでは「Cantabile Lite」を使用します。
インストール手順
準備編でダウンロードした SetupCantabile-4220.exe
を実行し、画面の指示に従ってインストールを行います。
インストール完了後、Cantabile x64 (64-bit) を起動します。
初回起動時には、名前とメールアドレスの入力が求められます。
任意の名前とメールアドレスを入力し、「Get Free License」をクリックしてください。

その後、登録したメールアドレス宛にLicense Keyが届きます。

Cantabileに戻り、License Key を入力して「Continue」をクリックすると、ライセンス選択画面が表示されます。
「Cantabile Lite」を選択し、「Use Selected License」をクリックして起動完了です。

そのまま続けて、Audio Driver(オーディオエンジン)の設定に進みます。
Audio Driverの設定
起動直後に表示される Audio Driver設定画面で、以下のように入力します:
Driver:ASIO – VoiceMeeter Insert Virtual ASIO
Sample Rate:48000 Hz
Buffer Size:512 (推奨。音切れを防ぎつつ、遅延も抑えられます)

💡 補足
VoiceMeeter Insert ASIO を選ぶことで、VoiceMeeterのマイク入力を途中で分岐させて VST 処理へ流すことが可能になります。
このあとの設定はいったんスキップするため、デフォルトのまま進めてください。
Audio Ports の確認
次に、Tools → Options を開き、左カラムから Audio Ports を選択してポート設定を確認します。
もし下記のようになっていない場合は設定を変更してください。
🔹入力ポート
in: Main Microphone → #1: IN#1 Left および #2: IN#1 Right
→ これは VoiceMeeter Banana の Stereo Input #1 に対応します。
🔹出力ポート
out: Main Speakers → #1: IN#1 Left および #2: IN#1 Right
→ これは VoiceMeeter に処理済みの音声を返すために必要な出力設定です。

この章のまとめ
ここまでの設定により、
VoiceMeeter で受け取ったマイク音声を、ASIO経由で Cantabile Lite に送る
Cantabile 上で VST プラグインによるリアルタイム処理(コンプレッサー等)を適用する
処理された音声を VoiceMeeter に戻し、Discord など通話アプリへ中継する
というルートが構築できました。
次章では、TDR Kotelnikov を読み込み、実際にコンプレッサーを設定・適用する手順を解説していきます。
3. TDR Kotelnikovの読み込みと信号線構築
この章では、VSTプラグイン「TDR Kotelnikov」をCantabileに読み込み、マイク音声にリアルタイムでコンプレッサーをかける設定を行います。
プラグインファイルの準備
まずは準備編で用意した TDR Kotelnikov (no installer).zip
を解凍します。
中には TDR Kotelnikov.vst3
というファイルが含まれており、これを使用します。
配置場所の例:TDR Kotelnikov (no installer)\VST3\x64\TDR Kotelnikov.vst3
VSTプラグインの保存先を確認/指定
CantabileでVSTプラグインを使用するには、指定されたフォルダに .vst3
ファイルを配置する必要があります。
または、自分で新しい保存先を指定しても構いません。
手順:
- 上部メニューから
Tools → Options
を開きます - 左のメニューから
Plugin Options
を選択します VST Plugins Folders
に表示されているパスを確認してください
デフォルトでは以下のような場所が設定されています:C:\Program Files\Common Files\VST3
この場所で問題なければそのままでOKです。
もし別のフォルダにしたい場合は、「Add」ボタンで追加できます。

プラグインの配置とスキャン
確認した保存先フォルダに、TDR Kotelnikov.vst3
をコピーして配置してください。
その後、Cantabileでスキャンを行い、プラグインを認識させます。
- 上部メニューの
Tools → Scan Plugin Folders (Quick)
をクリックします
※初回はFull
を選んでも問題ありません

TDR Kotelnikovの読み込み
プラグインのスキャンが完了したら、画面中央の「+」ボタン(Add Object)をクリックし、「Plugin」を選択します。
スキャン結果の中に「TDR Kotelnikov」が表示されていれば、それを選択して「OK」をクリックしてください。

信号のルーティング
プラグインを読み込むと、Cantabileのルーティング画面にノードが追加されます。
ここで次のように信号の流れを接続してください:
Main Microphone → TDR Kotelnikov
TDR Kotelnikov → Main Speakers

このルートにより、マイク音声がリアルタイムでKotelnikovを通過し、処理された音声がVoiceMeeterに戻されます。
この章のまとめ
ここまでの手順で、以下の環境が整いました:
- TDR Kotelnikov を Cantabile に正しく読み込み
- マイク音声を VST プラグインに通すルーティングを構築
この設定により――
- リアルタイムでマイク音声にコンプレッサー処理を適用し
- そのままDiscordなどの通話アプリへ出力できる状態になりました
次章では、TDR Kotelnikov のパラメータ設定と調整方法について解説していきます。
4. コンプレッサーの設定
この章では、TDR Kotelnikov のパラメータを調整し、実際にマイク音声を使ってコンプレッサーが正しく動作しているかを確認します。
TDR Kotelnikov の基本的な設定項目
TDR Kotelnikov は、高品質なマスタリング用コンプレッサーですが、リアルタイム配信にも十分使える軽さと機能を備えています。
大きな声を出したときに音量を抑えてくれるように、以下のように調整していきましょう。
推奨初期設定(話し声向け)
パラメータ | 値 | 説明 |
---|---|---|
Threshold | -15 dB | 大きな声にだけ反応するように調整。反応が強すぎる場合は -15〜-20 に下げる |
Ratio | 2.0 : 1 | 緩やかに圧縮。自然な聞こえ方を保つ |
Makeup | 0 〜 +2 dB | 圧縮によって下がった音量を少し補う |

ポイント
メーターを見ながら、「普通の声には反応せず、大声だけ圧縮される」ように Threshold を微調整していくのがコツです。大きな声を出すと赤枠で囲った部分が反応し、コンプレッサーが効いていることがわかります。

設定の保存
設定が済んだら、メニューの
File → Save Song As を選び、プロファイルとして保存しておきましょう。
次回以降すぐに同じ設定で起動できるようになります。
この章のまとめ
ここまでで、以下の設定が完了しました:
- マイク音声に対して、リアルタイムでコンプレッサーをかけられるようになった
- TDR Kotelnikov が正しく動作していることを確認できた
この環境により、声の大きさが一定に保たれ、Discord や配信で聞き取りやすい安定した音声を届けられるようになります。
5. Discordの音声設定
この章では、VoiceMeeter Banana で処理されたマイク音声を、実際に Discord に送るための設定を行います。
また、Discord 側での音声処理が干渉しないように、不要な自動補正機能を無効化します。
Discordの設定画面を開く
まず、Discord を起動し、画面左下の歯車アイコン(ユーザー設定)をクリックします。
左側のメニューから「音声・ビデオ」を選択してください。

入力・出力デバイスの設定
設定画面内の「デバイス」セクションで、以下のように設定します。
- 入力デバイス:
VoiceMeeter Out B1 (VB-Audio VoiceMeeter VAIO)
→ これは VoiceMeeter Banana の仮想出力(B1)に対応しており、Cantabile でエフェクト処理された音声がここを通じて Discord に送られます。 - 出力デバイス:
お使いのスピーカーやヘッドホンなど、自由に選んでください。

無効にすべき設定
Discord 側には便利な自動音声処理機能が多数ありますが、VoiceMeeter と Cantabile 側で既に音声処理を行っているため、下記の機能は 必ず無効にしてください。
項目 | 理由 |
---|
音声自動調整 | VoiceMeeterで音量をコントロールしているため、不要です。 |
入力感度の自動調整 | 圧縮後の音声がさらにDiscord側で増幅され、歪んで聞こえることがあります。 |
手動感度の調整方法:
- 「入力感度を自動調整します」をオフにします
- スライダーが表示されるので、マイクに向かって話しながらゲージが緑色になる範囲に調整してください


この章のまとめ
ここまでの設定によって、以下が実現されました:
- VoiceMeeter と Cantabile で処理されたマイク音声を Discord に送れるようになった
- Discord 側の不要な音声補正をオフにすることで、音質の劣化やノイズを防げるようになった
これで、高音質かつ安定したマイク音声を Discord の相手に届けるための音声ルートが完成しました。
まとめ
ここまでの手順を通じて、VoiceMeeter Banana + Cantabile Lite + TDR Kotelnikov の構成によって、マイク音声にリアルタイムでコンプレッサーをかける配信環境を構築することができました。
この仕組みを使えば――
- 声の大小を自動で整えて安定した音声をリスナーに届けられる
- 急に大きな声を出しても不快な音割れを防げる
- 自分好みのVSTプラグインを通して、より自然で聞きやすいマイク音質を実現できる
といったメリットがあります。
今後はこの環境をベースに、リバーブやノイズ抑制など他のエフェクトを追加することも可能です。
ご自身の声や目的に合わせて、さらに理想の音声環境にカスタマイズしてみてください。